「学習心理学」における重要な概念のひとつである潜在学習(latent learning)について解説いたします。
また、関連するS-S理論についても紹介いたします。
潜在学習(latent learning)とは?
新行動主義者のトールマンが提唱したもの。
行動に現れなくとも、潜在的に内的に処理される学習を指す。
迷路の実験
トールマンらは迷路を用いてネズミに対して実験を行った。
実験では被検体を次の3群に分けて統制した。
A群:ゴールすると強化子(飴)が与えられる。
B群:ゴールしても強化子(飴)は与えられない。
C群:前半の5日間はゴールしても強化子(飴)は与えられないが、後半の5日間ではゴールすると強化子(飴)が与えられる。
結果、飴が与えられる群は与えられない群と比較してゴールまでの時間が速いのだが、この実験における注目するべき重要な要素は、C群のネズミの結果である。
C群のネズミは、飴が与えられる前(前半の5日間)は迷路をクリアすることが少なかった、あるいはゴールまでの時間が遅かったが、飴が与えられるようになると(後半5日間)は素早くゴールした。
すなわち、ご褒美がなかったから前半は頑張っていなかっただけで、実はゴールまでの進路を学習していたのである。
トールマンは、このような行動に現れていないが、実際には内的に学習していることを見つけ出し、これを潜在学習と呼んだのである。
認知地図とS-S理論
潜在学習は、学習によって形成された心的な構造である認知地図の利用によってなされることが分かっている。
認知地図とは、同じくトールマンが提唱した用語である。
学習の際に、生体が頭の中でイメージしている空間や情報についての構造を図式化したものであり、頭の中の地図のようなものであるという例えに従って「認知地図」となずけられている。
トールマンの立場では、学習に際して、刺激(sign)と意味のある目的対象(significate)との手段-目的関係の結びつきが重要であると考える。
これをこの結びつきをS-S理論と言う。そして、この認知連合はサイン・ゲシュタルトと呼ばれている。
サイン・ゲシュタルト説では、環境側からの手がかりと生体からの期待によって学習が成り立つと考えるため、学習が単なる刺激と反応の連合であると考える従来のS-R理論とはことなる。
ポイント
臨床心理士試験や、公認心理士対応・臨床心理士指定大学院の入学試験の際にも出題されることが多い重要な用語です。
トールマンらが行った実験も踏まえて内容を抑えておくことをおすすめ致します。
学習は、自分の目的のための手段のために行うと考えるS-S理論についても抑えておいてください。