「臨床心理学」における主要な治療法のひとつである精神分析療法(psychoanalytic therapy)について解説します。
精神分析療法(psychoanalytic therapy)とは?
フロイト,Sによって創始、確立された心理療法である。
問題行動の原因を無意識に抑圧された心的外傷体験と考え、心的外傷体験の意識化と徹底操作による自我の強化を目指す治療法のことである。
原法はカウチと呼ばれる寝椅子を用い、週3~5回(各セッション約50分)を数年間行うものであったが、現在は対面式で週1回などの簡易型の検査が広く行われている。これを精神分析的心理療法と呼んでいる。
精神分析療法の内容
精神分析療法の流れを以下に示す。
①頭に浮かんでくることを批判や評価・選択することなくそのまま話す自由連想法を行う。
②沈黙という形で現れる抵抗(無意識に隠れている恐怖や欲求への到達を拒むこと)や分析家への転移を発見する。
③抵抗や転移に対して、回避している考えや感情を言語化して向き合わせる直面化と、簡潔な言葉で言い返すことで自己理解を援助する明確化という方法を用い解釈を与える。
④このような関わり、過程の中で、クライエントは洞察をしていく。
※解釈と洞察を繰り返していくことを徹底操作という。徹底操作によって、クライエントの自我が強化されて、意識化された心的外傷体験、感情、欲求に向き合えるようになるとされている。
失錯行為
自由連想法を行う際にみられる現象に失錯行為というものがある。
失錯行為とは、無意識的な抵抗のひとつで、直接的に言語で表現すると自我の脅威となるような無意識の内容を表現することへの防衛・抵抗として現れる、言い間違え、ど忘れ、読み間違えなどのこと。
失錯行為は、①無意識の衝動や欲求が漏れ出てくる作用、②無意識の漏洩に対する自我による検閲や超自我による抑圧、という作用の葛藤の結果生じると考えられている。
※精神分析の治療において、自由連想をしていく中で、失錯行為に焦点化してどのような文脈でそれが起きたのか、またどのような対象や事象に直面することへの抵抗なのかを分析・解釈していく抵抗分析が行われる。
夢分析
精神分析療法の主要な治療技法として夢分析がある。
意識化に焦点を当てているフロイトと、個性化と関連付けているユングで、夢の意味や解釈法が異なる。
【フロイトの夢分析】
夢を潜在夢(原初的な願望、抑圧された欲望)と顕在夢(超自我の検閲で変化した願望:夢の仕事)に分けて、顕在夢を手掛かりに潜在夢の内容を解釈する。
分析の対象になるのは無意識の内容(イド)と、夢の表現を歪める傾向(超自我、自我の防衛機制)の2つである。
治療場面においては、自由連想法で夢を思い出す。
【ユングの夢分析】
夢を客体水準(外界)と主体水準(心の中の特性)に分類し、集合的無意識や元型から意識に向けてのメッセージと捉える。
夢に性的な意味を認めず、個性化と関連付けて解釈する。
治療場面においては、拡充法を用いる。
※拡充法とは、夢の内容を連想などによってセラピストとクライエントが検討し自我を統合させる作業で、自己実現に至るための方法である。この際、セラピストはクライエントの夢と似たテーマをおとぎ話や神話などによって、夢の意味を豊かにしていく。
自我の強化
自我が強化された状態とは、高い現実検討能力をもち、自我同一性が一貫していて、昇華など適切な防衛機制を用いれる状態のことである。
精神分析療法および精神分析的心理療法では、このような状態を目指して治療を行う。
ポイント
精神分析療法および精神分析的心理療法は臨床心理学において非常に重要な治療法であり理論です。
専門用語の名称やその意味・内容を丁寧に理解していくことをおすすめします。
自我・超自我という概念を丁寧に理解したい方、ユング心理学の理論(元型や個性化)を学習したい方向けにそれぞれ関連記事を下に出しておきます。
ぜひ参考にしてみてください。