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心理学用語

心理学用語:統合失調症

統合失調症

「精神医学」における主要な精神疾患のひとつである統合失調症(schizophrenia)について解説します。

統合失調症(schizophrenia)とは?

内因性の精神疾患であり、かつて精神分裂病と呼ばれていたもの。主な症状として、①陽性症状、②陰性症状、③解体症状があげられる。

・統合失調症はかつてブロイラーによって精神分裂病として明確に概念化された。

ブロイラーの「4つのA」とは、連合弛緩感情障害自閉両価性のことであり、現在の陰性症状の例にみられるものである。(二級症状とも呼ばれる)

シュナイダーの「一級症状」も有名であり、現在の陽性症状の例にみられるものである。

ex)妄想幻覚作為体験思考化声思考吹入思考奪取思考伝播など。

<主な症状>

陽性症状

⇒発症初期の急性期に多く見られる、幻覚妄想

陰性症状

⇒急性期後に訪れる万世紀に多く見られる、意欲喪失感情の平板化

解体症状

まとまりのない会話と行動を主な特徴とする。

<原因>

原因は現在の医学では特定はされておらず、様々な仮説がある。以下に代表的なものをあげる。

二重拘束説

ペイトソンによって提唱されたもの。逃れられない矛盾するメッセージを突きつけられること。

脆弱性ストレスモデル

⇒遺伝的に持つ中枢神経の脆弱性にストレスが加わり発症すると考えるモデル。

ドーパミン仮設

⇒神経伝達物質のドーパミンの過剰分泌により発症すると考える仮説。

統合失調症の型

統合失調症は個人の呈する症状によって、①解体型(破瓜型)、②緊張型、③妄想型に分類することが出来る。

解体型・破瓜型

⇒思春期に発症し、意欲の減退、感情鈍麻、自閉傾向などの陰性症状が進行するタイプ。徐々に陽性症状になることが多い。

独語、空笑、しかめ顔がみられ奇妙な独自の世界に李没することがある。人柄が変わることもあり予後が悪い。(幻覚や妄想は一時的で断片的な場合が多い。)

緊張型

カタレプシーなどの顕著な精神運動性障害を特徴とする。

多動や昏迷、命令自動や拒絶などの症状が急に交替しながら現れる。幻覚や妄想などに圧倒され外界の刺激に適切に反応できない。予後は解体型より良いといわれている。

妄想型

⇒他の型に比べて発症年齢が遅く、多くは30歳前後に発症する。

幻覚や妄想が中心で、陰性症状はそれほど現れない。

思考や会話は比較的良好に保たれていることが多く予後は良い。

統合失調症の治療と経過

治療は陽性症状に対しては、薬物療法や入院などの精神医学的な介入陰性症状に対しては、社会復帰に向けたSST(ソーシャルスキルトレーニング)や認知行動療法などの臨床心理学的な介入が有効だとされている。

 

しかし、完全な治癒はないとされており、寛解(症状の緩和)を目指す。

治療の経過は以下のような段階をたどるといわれている。

前兆気

⇒発症する前に眠れなくなったり、光や音などの刺激に敏感になったり、精神的に不安定になる。しかし誰にでも起こりうる精神的不調と「違いが明確でないため発症を予測することは困難である。

急性期

⇒前兆気の精神の不安定さが急激に高まり、幻覚や妄想、興奮状態などの陽性症状が目立つ時期である。

休息期

⇒急性期を過ぎると幻覚や妄想、興奮状態に収まり、逆に感情が乏しくなったり無気力になったりと陰性症状が目立つようになる。外界との関わりを立つようになり、精神的には不安定である。

回復期

精神が徐々に安定し、症状が和らいでいく時期である。社会復帰を目指す時期であるが、症状が残ったり認知機能の障害が出現する。

統合失調症スペクトラム

DSM-5では、「統合失調症スペクトラム」という概念を用いて、統合失調症カテゴリー内の各診断を一連の連続体としてまとめている。

以下に具体的なものを示す。

統合失調型パーソナリティ障害 症状の特徴は見られるが、はっきりとは分からない。
妄想性障害 症状の主領域の内、妄想のみを有する。
短期精神病性障害 症状が認められても、1カ月以内に完全に回復したもの。
統合失調症様障害 診断基準は満たすが、半年以内に基準を下回ったもの。
統合失調症 診断基準を満たす症状が、持続期間が半年を超えたもの

関連用語

カタレプシー:受動的にとらされた姿勢を保ち続け、自分の意思で変えようとしない症状。

プレコックス感:精神科医が統合失調症の患者に会った際に感じる、奇妙な感じ、統合失調症らしさのこと。

昏迷:周囲の刺激に反応しなくなること。

セネストパチー:身体医学的に理解することのできない奇妙な感覚と身体の変容の革新に基づいた訴えを執拗に繰り返すもの。

BACS(統合失調症認知機能簡易評価尺度):統合失調症の認知機能を幅広く簡便に評価しうる尺度。言語性記憶、ワーキングメモリー、運動機能、注意、言語流動性、遂行機能を評価する6つのテストで構成されている。keefeらによって考案された。

ポイント

統合失調症の症状は一般的には理解しがたいものもあり、心理学、精神医学の初学者が直感的に理解するのは困難だといわれています。

症状、型、経過から関連用語までしっかりと覚えておくことが望まれます。

関連用語や、ブロイラーの「4つのA」、シュナイダーの一級症状も理解を深めるための重要なポイントですので抑えておくことをおすすめします。

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