「臨床心理学」における主要な治療技法のひとつである治療的パラドックス(therapeutic paradox)について解説いたします。
目次
治療的パラドックス(therapeutic paradox)とは?
家族療法における主要な技法のひとつである。
表面的には、問題を活性化させるような支持を出すことで、クライエントをパラドックス(矛盾)状態にさせ、リフレーミングのきっかけとなるような状況を作り出すことを目的とする。
逆説的介入、治療的ダブルバインドともいう。
治療的パラドックスによるリフレーミングの効果
リフレーミングとは、問題自体の解釈を変えるために、クライエントの持っている問題の状況や解釈の仕方、文脈の枠組みを作り変えることである。
※治療的パラドックスを用いることで、コミュニケーションにおける問題と解決行動が解消され、リフレーミングが導き出される。
具体例
例えば、命令やしつけに従わない子供がいるとする。
母親は子供に対して、「反抗しないで、言うことを聞きなさい」と命令するが、子供は全く従わない。
そこで今度は「もっと反抗しなさい」とパラドックス状態にさせるような指示をする。
結果として子供は、反抗する理由が消失して反抗しなくなる。
症状処方と抑制処方
治療的パラドックスを技法として用いる戦略的家族療法では、しばしば症状処方と抑制処方という技法が用いられる。
症状処方
治療的パラドックスのひとつである。
症状を意図的に強化したり再現させるように指示をすることにより、クライエント自身が意図的に症状をコントロールできた状態を作り出す。
逆に、セラピストに従わず抵抗し続ける場合、症状が軽減されることにもなる。
従って、どちらにせよ症状を克服することにつながるという発想である。
抑制処方
症状処方などによって生じた急速な変化について、そのペースを遅らせるなどの指示によって、症状の悪化や再発の不安を軽減させる方法である。
ペースが遅れたり、症状が悪化した場合には、クライエント自身が意図的に症状をコントロールできたことになり、悪化に対する不安の軽減につながる。
逆に、ペースが遅れず、再発することがない場合、症状が改善されたことにもなる。
従って、どちらにせよ、症状の克服につながるという発想である。
おまけ:メタファ
戦略的家族療法において用いられる技法として有力なメタファを紹介しておく。
メタファとは、家族が抱えている問題や、陥っている状況を、童話や逸話などを題材にしてその家族に理解させる方法である。
さらに、セラピストが何か指示を出すときに、直接的に伝えるのではなく間接的な表現を使うことによって、家族の主体性を尊重することも含まれる。
ポイント
家族療法において用いられる代表的な技法である治療的パラドックスについて解説してきました。
具体例や実際の技法を紹介しましたので、ぜひ理解のために役立てていただければなと思います。
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