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最後通牒ゲームから学ぶ成功する交渉術!【行動経済学】

最後通牒ゲーム

ビジネスや商談、営業などあらゆる点で交渉する機会があるかと思います。

事業をやっていくにあたり交渉と情報が最も大切だといわれているくらいです。

「交渉がうまい人とうまくない人の違いって何だろう?」「自分の主張が通りやすくするためにはどんなことが必要なんだろう?」「自分の取り分を最大限にするための良い方法が知りたい。」

こんな疑問に対する答えの一助になるのが行動経済学の最後通牒(さいごつうちょう)ゲームです。

早速、最後通牒ゲームの解説と、そこから学ぶ成功する交渉術について考えていきます。

最期通牒ゲームとは

最期通牒ゲームとは、提案者と応答者の2名がお金や利益を分け合うゲームのことです。

ここでは提案者をA、応答者をBとします。

<手順>

① 研究者はAに10万円をわたす。

② Aはその10万円をもうひとりの被験者であるBと分け合う。

③ 分け合うにあたりAは自分の好きな金額を1度だけBに伝えることが出来て、Bは「受諾」か「拒否」のどちらかで回答する。

<ルール>

① Aの提案にBが「受諾」した場合、Bはその金額を持ち帰ることが出来て、Aは10万円からBに分けた金額の差額分を持ち帰ることが出来る。

② Aの提案にBが拒否した場合、両者ともに持ち帰ることのできる金額はゼロになる。

AとBは初対面で、実験終了後にお互いにアクセスすることはできない。

④ 自分がAになるかBになるかはルールを説明された後に直前にコインで割り振られる。つまり完全な運によりAになるかBになるかが決まる。

お互いの顔や身分などあらゆる情報が分からないようにそれぞれ別室にこもり画面上の文字だけでコミュニケーションをとる。

⑥ 金額の設定は1円単位で調整することが可能である。

このような手順、ルールの下でお金を分け合うのが最後通牒ゲームです。

経済合理性の視点から考えた場合、自分の利益を最大化することがベストな選択なので次のような結論が出るのが自然です。

・Aは限りなく0に近い金額を提示する。

・BはゼロでなければAの提案をすべて受け入れる。

自分がAになるのかBになるのかは完全に運なわけですし、仮にBになってしまった場合は1円でも持ち帰れたらプラスになるので「受諾」したほうが合理的です。(交渉が決裂してしまったら0円ですので。)

しかし、答えは全く別のものになりました。

<結果>

世界中で多くやられているこの最後通牒ゲームですが多くの統計で、Aからの提案額が3万円(全体の3割)を下回ったら交渉が決裂しやすいという統計が出ています。

あらゆる研究者の考察には以下のようなものがあります。

・Aは10万円ももらっているくせに限りなく自分の取り分を多くするなんて「なんてがめついやつなんだ」とBが怒り、「自分が損するくらいなら、Aも道連れにしてやる」と思う。

・Bは「役割の振り分けは運で決まっているのに、自分の取り分が少なすぎるのは不公平だ、侮辱された」と思う。

ここでポイントなのは、あくまでBはたとえ2万円であっても1万円であっても100円であっても、0円でない限りAの提案を「受諾」したほうが経済的に考えたら合理的なわけです。

しかし、Bは経済的な合理性で意思決定を行っていません。完全に感情によって意思決定を行っているのです。

人間の行動は合理性ではなく感情で決まる

この研究が教えてくれている一番大切な考え方は、人間には自分だけ得をしようと考えている相手の要求は「拒否」したくなるという特徴があるということです。

※脳科学の研究でも、このような状況下の時、不公平に対する嫌悪感などと関連する島皮質前部のほうが、合理性(利益の追求)に関与していると考えられている背外側前頭前野の活動を上回っていることを報告しています。

実際に交渉や商談をする際は、最後通牒ゲームでいうところのAの立場にあたるのですが、どのような行動をとることがベストだと思いますか?

以降は、現実の社会の中の条件にのっとってベストな提示選択を考えていきます。

徹底的にgiveすることが大切

上記の条件で行われる最後通牒ゲームで、もしあなたがAになったらいくらを提示するでしょうか?

4万円(自分の取り分は6万円)と提示する人もいれば、5万円(自分の取り分も5万円)と提示する人もいるかと思います。

最後通牒ゲームでは、終了後に相手に会ってお金の移動行うことが出来ないのであまり多くの金額を提示することは考えにくいかもしれませんが、上記の報告を見る限り4割以上は相手に渡したほうがよさそうです。

しかし、実際の社会ではどうでしょうか?

<僕の意見>

僕は8万円以上を相手に渡したほうがいいと思っています。相手にもよりますがまともな人だったら10万円すべてを相手の取り分として提示してもいいくらいだと思っています。

なぜなら、実社会の中ではゲーム終了後(ビジネスの場合なら商談終了後)に二度と会えないという条件など存在しないからです。むしろ限りなく次がある確率のほうが高いですよね?

相手が普通の人であれば、全部もらってしまった罪悪感が嫌なので、「半分戻します」と言ってくれる可能性が限りなく高いはずです。またそれ以上にその相手から高い評価が得られるので長期的に見た時にかなり有利になると思います。

つまり、先に自分から損をする選択を誠実に伝えることが出来れば結果的に一石二鳥の結果を回収できるチャンスが広がります。

相手にgive(与える)する量が多くなれば、この人と仕事をすると得だからもう一度取引したいと思ってもらえて信頼が得られます。

1回の商談で自分が7/10という量をtakeして、相手に満足してもらえず次回につながらないよりも、1回目の商談では仮に1/10という量しかtakeできなくても8回以上続けば合計量で見込める利益が増えます。

従って、徹底的にgiveをして相手に満足してもらうことが交渉事には大切だと思います。

「売ろうとするセールスマンほど売れない」や「損して得取れ」という言葉がありますが、人間の根幹部分の性質を考えるとまさにその通りです。

まとめ

今回は、最後通牒ゲームから交渉や商談を有利に進める方法を考えてみました。

行動経済学の最後通牒ゲームは、ビジネスの場面でなくとも人間関係全般で用いることのできる有用な考え方を教えてくれていると思います。

自分の利得は少なくとも相手の利得を増やしてあげようとする親切行動もありますが、初対面や関係の初期の段階ではおそらくこのような行動は起きにくいと思います。

むしろ、自分の利得はゼロになってもいいから相手の利得も大幅に減らしたいと考えてしまうのが人間ですので、まずは相手に得を与えて信頼関係を作っていくことが重要だと思います。

与える人こそ長期的に見たら成功するのです。

 

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